おすすめ小説1選!『マチネの終わりに』平野啓一郎
あらすじ
天才ギタリストの蒔野(38)と通信社記者の洋子(40)。
深く愛し合いながら一緒になることが許されない二人が、再び巡り逢う日はやってくるのか――。出会った瞬間から強く惹かれ合った蒔野と洋子。しかし、洋子には婚約者がいた。
スランプに陥りもがく蒔野。人知れず体の不調に苦しむ洋子。
やがて、蒔野と洋子の間にすれ違いが生じ、ついに二人の関係は途絶えてしまうが……。
芥川賞作家が贈る、至高の恋愛小説。
読んでないけど感想!(ネタバレがあるかもしれない)
アメトーーク!で紹介されたことで有名です。
また平野啓一郎は、文字で絵を描いたりと実験的な小説を数多く書いていることで有名な作家です。
天才ギタリストの蒔野と通信社記者の洋子の恋愛を描いた小説。
共に一目見たときから愛し合う2人ですが洋子には婚約者がいます。
愛し合うが結ばれない彼らは、仕事や日常のストレスとあいまって徐々にすれ違っていきついには関係が途絶えてしまいます。
2人の関係が途絶えた序章からこの作品は始まります。
それぞれの視点で物語は進んでいきますが蒔野視点では洋子が、洋子視点では蒔野が一切出てきません。
もう赤の他人。
彼らには各々の生活があり、それぞれの視点での仕事、悩み、恋愛が描かれています。
序章を読まないと別の2つの作品を読んでいるように感じますが、我々読者は彼らが愛し合っていた事実を知っているんです。
彼らの関係を知る我々は、知らなければ読み飛ばしてしまうような些細な行動にも意味があるのではといぶかってしまいます。
例えば洋子が、序章で蒔野が吸っていたたばごと同じ銘柄のものを吸うというシーンがあります。
昔から洋子を知る婚約者は、タバコを吸い始めた当時すごく驚いたと回想するシーンがあります。
表面的には交わらない蒔野と洋子。
しかし読んでいる読者としては彼らの関係を連想してしまう作品です。
最後まで蒔野が蒔野と洋子が関わるシーンはありませんが彼らが未だに愛し合っていると感じるラストの描写は秀逸です。
文章も読みやすいので興味がある方は読んでみてはいかがでしょうか?
私はこの作品も作者の他の作品も読んだことないですが、視覚に訴える実験的作品として、文字で絵を描いた『女の部屋』(『あなたが、いなかった、あなた』収録)や最後に書かれている詩と文章を見比べると浮かび上がっているように見える『追憶』(『高瀬川』収録)など色々な工夫が施された作品が多くあるそうなのでそちらの方が正直読んでみたいです。
価格:1,836円 |